SOLO

 アルバムのほか、サントラなどに提供された単独曲、プロデュース作品、客演などもありますが、ここではアルバムのみ取り上げます。


DONALD FAGEN SOLO

THE NIGHTFLY
『ナイトフライ』 ドナルド・フェイゲン
1982.10
I.G.Y. / Green Flower Street / Ruby Baby / Maxine / New Frontier / The Nightfly / The Goodbye Look / Walk Between Raindrops

 黄金のアメリカ50年代をコンセプトとする自伝的な作品。ウォルター・ベッカーはいないがプロデューサーはゲイリー・カッツ、エンジニアはロジャー・ニコルズであり、スティーリー・ダンの音を完全に踏襲している。
 これ単体としては非常に完成度が高く、素晴しい名盤である。だがやはり『ガウチョ』からの流れで人間的な体温や触感が希薄なのが物足りない。正確な演奏はもはや打ち込みに匹敵する。グレッグ・フィリンゲインズはインタビューで、「雨に歩けば」のバッキングのシンセをクリックだけで弾かされて相当参った、勘弁してくれ、と語っていた。マイケル・オマーティアンも同様にして「ルビー・ベイビー」を弾かされたとか。しかも右手だけ・・・。


KAMAKIRIAD
『KAMAKIRIAD』 ドナルド・フェイゲン
1993.5
Trans-Island Skyway / Countermoon / Springtime / Snowbound / Tomorrow's Girls / Florida Room / On The Dunes / Teahouse On The Tracks

 プロデューサーがウォルター・ベッカーでエンジニアがロジャー・ニコルズのため、事実上スティーリー・ダンの作品といえる。ただしゲイリー・カッツは係わっていない。
 ますます人間的な体温や触感がなくなった。やはり年齢的なものなのか。曲の構成もちと冗長なのが多い。フェイゲンはこれがリリースされる前のインタビューで、「メロディーには興味がなくなった」「ラップのようなリズム主体の音楽に関心がある」と語っていたが、それが如実に表われている。ただ「ティーハウス・オン・ザ・トラックス」はライブでは非常に出来が良く楽しめたので、やはり「質感」が重要なポイントとなるのだろうか。
 なお、初回盤を聴いたフェイゲンが「ドラムのフィルが小さかった」と申し立てたため、次のプレスでは、ミックスし直して(?)それが大きくなっているとのこと。


MORPH THE CAT
『モーフ・ザ・キャット』 ドナルド・フェイゲン
2006.3
Morph The Cat / H Gang / What I Do / Brite Nitegown / The Great Pagoda Of Funn / Security Joan / The Night Belongs To Mona / Mary Shut The Garden Door / Morph The Cat (Reprise)

 これがフェイゲンのソロ三部作の三作目。ナイトフライは無垢な少年期、KAMAKIRIADは人生の中盤について、そしてモーフ・ザ・キャットは終焉・死をテーマにしたとのことで、全体的にやや暗い。
 内容的には、もはやワンパターンといえるほどその定型化された「フェイゲン・スタイル」。まあミュージシャンの顔ぶれや音質面からいえば、間違いなく2000年代のフェイゲンの音の再生産。この曲は前のアルバムあの曲風だな、と類型化できてしまう。今さらリスナーもあまり変化は求めないだろうが、還暦に差し掛かろうというおじさんにこれ以上の変化を望むのは無理というものか。


THE NIGHTFLY TRILOGY
『ナイトフライ・トリロジー』 ドナルド・フェイゲン
2007.11
The Nightfly Album / True Companion / Green Flower Street (Live) / Centurys End / New Frontier (music video) / Centurys End (music video)
Kamakiriad Album / Big Noise New York / Confide In Me / Blue Lou / Shanghai Confidential / Dean Seay Interview/Reprise Promo (1993) / Tomorrows Girls (music video) / Snowbound (music video)
Morph The Cat Album / Rhymes / Hanks Pad (Live) / Viva Viva Rock N Roll (Live) / World CafInterview (2006)
Rhymes / Big Noise New York / True Companion / Confide In Me / Blue Lou / Shanghai Confidential / Green Flower Street (Live) / Centurys End / Hanks Pad (Live) / Viva Via Rock N Roll (Live)

 フェイゲンのソロ三部作のサラウンドミックスに加え、映画サントラで発表した曲や未発表ライブ音源、インタビュー、ビデオクリップなどを収録したCD4枚、DVD3枚の計7枚組ボックスセット。
 よくこういう阿漕な商売をするもんだねぇ・・・。


SUNKEN CONDOS
『サンケン・コンドス』 ドナルド・フェイゲン
2012.10
Slinky Thing / I'm Not the Same Without You / Memorabilia / Weather in My Head / The New Breed / Out of the Ghetto / Miss Marlene / Good Stuff / Planet D'Rhonda

 フェイゲンのソロ四作目。正直あまり期待していなかったので、予想は裏切らない出来という感じで。メロディ性が希薄なのはもうずっと続いている傾向だからしょうがないが、アレンジも平板かなあ。唯一無二のフェイゲンの世界であることは間違いないけれど。
 「Green Flower Street」風の「I'm Not the Same Without You」なんかは音作りも含めて『ナイトフライ』時代の曲調でニヤリとさせられるが、それがハイライト。前作同様に後半の曲想が暗いのがどうも気になる。
 それにしてもフェイゲンらしからぬローファイな音質の意図は


WALTER BECKER SOLO

11 TRACKS OF WHACK
『11の心象』 ウォルター・ベッカー
1994.10
Down In The Bottom / Junkie Girl / Surf And Or Die / Book Of Liars / Lucky Henry / Hard Up Case / Cringemaker / Girlfriend / My Waterloo / This Moody Bastard / Hat Too Flat / Little Kawai / Medical Science

 ベッカーの歌は下手だし、多分に趣味的な雰囲気が感じ取れる。曲も厳選されたという感じではないが、こちらのほうがスティーリー・ダン的という意見もある。フェイゲンとの共同プロデュースだが、曲も歌詞もベッカーならではの奇妙なドロドロ感があり、フェイゲンのお坊ちゃん的な作風と好対照をなしている。やはりこのふたつのエッセンスが合体してこそスティーリー・ダンだろう。この作品で聴けるギターの音はベッカーがこれまでプロデュースしてきた作品と同じようなシャキンとした音なので笑える。が、その音でレイドバックしたフレーズを弾かれてもしっくりこないんだなぁ。


CIRCUS MONEY
『サーカス・マネー』 ウォルター・ベッカー
2008.6
Door Number Two / Downtown Canon / Bob Is Not Your Uncle Anymore / Upside Looking Down / Paging Audrey / Circus Money / Selfish Gene / Do You Remember The Name / Somebody's Saturday Night / Darkling Down / God's Evil View / Three Picture Deal

 楽しみです。なんともいえぬ味わい。還暦間近のおじさんの作品だけに曲調も音質も非常に穏やか。そこはどろどろセンスのベッカー。抑揚のない曲調といい、相変わらず前向きさを感じさせない歌声といい、ポップス的な作風を大いに踏み外してるのだが、その踏み外す方向がスティーリー・ダンのファンの望む方向に向いている。こういっちゃなんだが、こちらのほうが「モーフ・ザ・キャット」よりもスッと心になじんでくるんだなあ。この「サーカス・マネー」を聴いて、「モーフ」を聴いて思う。ああやっぱりこの二つが合わさってこそスティーリー・ダンよ。




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